『ヱビスビール×荒木飛呂彦』美人画浮世絵木版画で輝く人生の4つの要素

『ヱビスビール×荒木飛呂彦』美人画浮世絵木版画で輝く人生の4つの要素 出会い -encounter-

全世界135部限定の作品 『ヱビスビール×荒木飛呂彦』美人画浮世絵木版画が我が家にやってきました。この作品は抽選販売だったのですが、おそらく当選した135人の中で、一番必然性、もしくは運命を感じているのは僕なんじゃないだろうか… これまでの人生における「点」を感じる作品とタイミングだったので、そのことを綴ってみたいと思います。

「言葉」ではなく「心」で理解できた体験

まず、僕と美術との深い関わりは、香川県の直島を訪れたことから始まりました。それまで美術や芸術に特別な知識があったわけではありません。しかし直島・ベネッセハウスでアートに触れた時、「言葉ではなく心で理解できた!」という体験をしました。この感覚が、その後の僕の美術との関わり方の基盤になっています。

そんな経験をしたすぐ後、2005年、28歳の頃に、江戸時代後期の浮世絵師・葛飾北斎の展覧会『北斎展』のWeb制作にディレクターとして関わることになりました。アートが身近なものになっていたおかげで、この仕事に真摯に取り組むことができたのではないかと思いますし、ありがたいことに『北斎展』での仕事ぶりが評価され、2007年には『オルセー美術館展』のWeb制作とプロモーションを担当することになりました。

その『オルセー美術館展』のプロモーション案を考えている時に、出展作品である『すみれの花束をつけたベルト・モリゾ』という作品を見ていて、荒木先生の絵を思い出し、そこから荒木先生にお仕事の打診をさせていただきました。前々から『ジョジョの奇妙な冒険』のファンで、なんとか会えないかと画策していたんですよね。

荒木先生はゴーギャンが好きだってどこかで見たし、その荒木先生にゴーギャンの良さを語ってもらえないだろうか、美術展の良さを語ってもらえないだろうか… という企画が採用され、荒木先生とお仕事ができることになりました。

荒木先生と『すみれの花束をつけたベルト・モリゾ』

ポール・ゲティ美術館と荒木飛呂彦先生

オルセー美術館展の仕事の少し前、僕はロサンゼルスの J・ポール・ゲティ美術館を訪れたんですが、そのミュージアムショップで『Going to the Getty』(ゲティ美術館に行こう)という一冊の本に出会いました。美術館に行くという内容の子ども向け絵本(というかマンガ)で、見た瞬間に「荒木飛呂彦先生のキャラクターでこういうのがあったら面白いな」と感じました。帰国後、荒木先生に会うことは決まっていたので、それをお土産に購入し、『オルセー美術館展』のプロモーションの打ち合わせの際に先生にお渡ししました。「美術館に行こうってマンガのミュージアムグッズっていいですよね」と話しながら。

この時には昼食を共にする機会もあり、様々な話を聞かせていただき、先生のフランクな人柄に触れることができました。巨匠という特別感や選ばれた感じはなく、情熱が内に秘められている感じのとても魅力的な方でした。

ちなみに、後に『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』という作品が登場した時に、僭越ながらあれがここにつながったんじゃないかと… 今でも勝手に僕は思い込んでいます。

それにしても、直島での体験がなければ、北斎展で良い仕事はできなかっただろうし、北斎展で結果を出せなければ、オルセー美術館展にはつながらなかっただろうし、そう考えると荒木先生とも会うことはなかったのかもしれません。偶然に、そしていろいろ選択をしながら掴んだ結果が、次の機会につながっていったのだと思います。

「美人×麦酒」とサッポロビール

話は変わって… 僕はビールブログを約20年間運営しています。その中で特に思い入れがあるのが「美人×麦酒」というコンテンツです。「ビールは笑顔が似合う酒」という想いを伝えるため、そしてオレ得のために始めたこのコーナーには、50人以上の女性に登場してもらいました。

「美人×麦酒」は、単純に美人と僕がサシ飲みしている様子を撮影するというシンプルなコンテンツです。ビールを飲んだり、話して笑っているところだったり、ちょっとした素敵な表情だったりを切り取り、だいたい10〜20枚の写真をブログで公開していました。お酒を通じていろいろな話ができるし、時には酔っ払ってくることもあって、とても楽しい時間でした。

美人画

実はこのコーナーには特別な思い出があります。登場していただいた女性の一人が、後に奥サマーになったのです。そもそも、奥サマーと出会ったのはサッポロビールのイベントで、場所はヱビスビール記念館でした。そこから美人×麦酒を経て結婚。僕の人生においてビールが結びつけてくれた最大の贈り物だったと思います。

ビール

僕たちはビールと美味しいものを求めて、アメリカ、ドイツ、チェコ、韓国など様々な国を訪れては、現地のビールと料理を楽しみました。二人ともエーデルピルスが好きで、婚姻届もエーデルピルスのあるお店で書いたほどです。「子育てが終わったら二人でいろんなところを旅して美味しいビールを飲もう」——それが僕の計画であり、人生の楽しみでした。

美人とビールとお姫様抱っこ

旅の思い出といえば、いろいろなドタバタなエピソードがあります。別々に乗った飛行機が遅延したり、奥サマーがハンバーグを隣の人のお皿に飛ばしてソースが跳ねたり…。奥サマーは英語が得意ではなかったのですが、ビアバーでステッカーが欲しいと言おうとして「Please give me a シール(seal=アザラシ)」と言ってしまい、怪訝な顔をされたこともありました。そんな思い出がたくさんあります。

亡くなった美人と手にした希望

けど、2024年の11月、奥サマーが亡くなりました。僕は8歳のお子サマーを抱えてシングルファーザーとなりました。スキル的にいつシングルになってもいいように準備していたつもりでしたが、悲しみは思っていたよりも深いもので、思い描いていた未来が消えて、暗闇の荒野に立っているような気分でした。

そんな時、『ヱビスビール×荒木飛呂彦』美人画浮世絵木版画がうちにやってくることになりました。

明治時代より展開されていたヱビスビール美人画ポスターを、荒木飛呂彦先生が現代的にアップデートし、人間国宝・岩野市兵衛氏による「越前生漉奉書」という究極の和紙に、経産省認定の女性伝統工芸士・菅香世子氏が彫り、文化庁認定の摺師・伊藤達也氏が摺るという、日本の伝統工芸の粋を集めた本格的な浮世絵木版画です。

「ビール」「荒木飛呂彦」「美人」「浮世絵」という僕の人生で重要と思うものの集大成のような作品がうちに来る… いや、この作品にはうちに来る理由があるのではないか… 失った奥サマーの代わりにはなりませんが、その闇の中で見出した輝きは「まだまだ楽しめ」というメッセージのような気がしました。

作品を通してお子サマーに伝えたいもの

浮世絵は元々庶民のものであり、江戸時代においては神聖視されるものではなかったと僕は考えています。だからこそ、この作品も箱に入れて大事に保管するのではなく、積極的に楽しみ、お子サマーにもその価値を、そしてストーリーを伝えていきたいと思っています。なので、とりあえずリビングに飾ってみました。

浮世絵版画

これは推しの限定グッズではなく、ビールも荒木先生も美人も浮世絵も、僕の人生において、それぞれに大切なポイントが重なった、物語が詰まったものだといえます。人生の中で点と点が線となる、もちろん良いことも悪いこともあるけど、だからこそ良い点をつなげて良い形にすることが大切なのだ、諦めずに、腐らずに、一つ一つできることをやっていくことで、いつか煌めく宝物に出会えることもある… そんなことをこの作品を通してお子サマーに伝えられたらうれしいです。

選択と偶然が織りなす人生の一枚

人生は選択と偶然の積み重ねです。直島でのアート体験、北斎展の仕事、オルセー美術館展での荒木先生との出会い、ヱビスビール記念館で出会った奥サマーとの「美人×麦酒」、そして今回の浮世絵木版画 ——それぞれが偶然性を持ちつつも、その時々の選択が次の機会を生み出してきました。

今回135部限定の作品の中の1部を手に入れることができたのも、そうした選択と偶然の延長線上にあるものだと感じています。亡き奥サマーとの思い出も大切にしながら、もう少し人生を楽しんでみようと思います。

なんというか、関係者の皆さま、ありがとうございました!

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